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2021.08.11

人材マネジメントのポイント ~人件費の適正配分が鍵~

1.給与は多いほうがいい?

 国民には勤労の義務がありますが、働く理由は人それぞれです。生活の維持・向上、世間体、自己成長や自己実現或いは社会貢献等、様々な理由があると思います。まずは人として最低限の生活の維持をしたい、できれば経済的により豊かな生活をしたいと願うことが働くことの主たる原動力でしょう。

 働くことは「稼ぐ」ことでもあります。生きていくためには稼いてお金を得る必要であります。「稼ぐ」とは実った稲の穂を意味するそうです。

 ではお金はどのくらい必要でしょうか。もちろん多ければ多いほど良いし、労働の対価としてのお金(給料)はなるべく多く欲しいというのが心情です。

 ただ働くにおいても、職種や業種、また個々の能力等から、自ずとその額は決まってくるものと誰もが理解しています。だからどこで何の仕事をするかが、お金の多寡を左右する重要なポイントです。

 一方でそこは理解しながらも、例えば自分の給与の取り分のバランスが崩れていたらどうでしょうか。年功序列のために成果と給料が見合っていない、能力や成果を出していても昇給が少ない或いは他社同期の給料より明らかに低い等など。これでは不満がたまるでしょう。次第にモチベーションが下がり、組織への信頼感を失い離職に繋がるということになり兼ねません。

 給与は多いに越したことはありませんが、それ以上にバランスが必要です。

2.転職理由は?

 人材紹介会社による転職理由の調査をみると、上位に給料があります。転職理由には、本音と建て前がありますが、わたしの経験からすると、本音は「人間関係の悪化」か「給与等待遇の不適正」が双璧であると感じています。

■2020年転職理由ランキング

・Type転職エージェント調べ

https://type.career-agent.jp/knowhow/change_reason_2020.html

1位 年収・待遇

2位 業務内容

3位 キャリアチェンジ

4位 労働・残業時間

5位 コロナ関連

■DODA調べ

https://doda.jp/guide/ranking/095.html

1位     社内の雰囲気が悪い             12.5%

2位     業界・会社の先行きが不安                 9.7%

3位    給与が低い・昇給が見込めない      8.7%

4位     人間関係が悪い/うまくいかない    5.9%

4位     ハラスメントがあった(セクハラ・パワハラ・マタハラなど)                 5.9%

 

マイナビ調べ https://news.mynavi.jp/article/20210323-1827167/

1位    給与が低い 9.7%

2位     スキルアップしたい 8.0%

3位  業界・会社の先行きが不安 7.3%

4位     倒産/リストラ/契約期間の満了 7.3%

5位     ハラスメントがあった 6.2%

 次に給与が低いと感じる理由は2つの状態が考えられます。

 一つは他社との比較です。例えば自分の能力や成果と比して給与が低いと感じている。そして他社の採用条件と見比べると、チャレンジできると心が動かされるでしょう。この場合はハイパフォーマーの方に多いと思われます。

 そしてもう一つは社内での位置関係です。例えば会社の給与水準はそれなりであるものの、評価されていないと感じるケースです。但しこれはハイパフォーマーとローパフォーマーで分けて考える必要があります。組織としては、少なくともハイパフォーマーについては、離職防止のためのケアをしなければなりません。

3.人件費の適正配分とは?

 さて人材マネジメントの意義を端的に言いますと「人材のシナジーを起こすこと」だと考えます。そしてそのために、採用、評価、処遇、育成、配置等を一貫性と公平性をもって継続的に実施することです。

 そしてこの人材マネジメントの目標は、極端に言えば、ハイパフォーマー人材やポテンシャル人材の雇用を維持することであります。

 ハイパフォーマー人材の離職やデモチベーションは、上記の2つの状態を見直すことが必要です。つまり人件費の適正配分が人材マネジメントの鍵となります。

 ではどうしたらよいのでしょうか。

 まず他社との比較で明らかに給与水準が低いと判断されるケースです。これは他社の採用情報や面接での情報収集そして賃金構造基本統計(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html)等のデータからある程度掴めます。そして給与ポリシーともなる給与水準の目標値を定めます。

 例えば業界や企業規模等の職位毎の給与水準において、上位、中上位または中位(第4四部位、第3四部位、第2四部位)のいずれかに目標設定します。また到達に向けたスケジュール等を明確にし、ベースアップや賞与の支給額或いは再評価による修正を順次していきます。

 基本的には総額人件費は変えずに再配分により修正が可能であればよいです。一方で全体的に予算が不足となる場合には、人事から経営に提案することが必要です。戦略的な観点から、利益配分やそれに伴う労働分配率の在り方を検討して、人材投資への予算を勝ち取ることが必要です。借りは後で返すとの自信を持って、戦略的に考える必要があると思います。

 次に、社内の均衡を如何に図るかです。例えば今後も年功序列や終身雇用の人事制度を維持することは一般的には競争力を失うことであることを理解することが必須です。そのうえで、人事制度の見直しをし、社員の再評価をします。

 但したとえハイパフォーマー人材でも破格の処遇をする必要はありません。もちろんITエンジニア等の希少なスキル人材は別かもしれませんが、評価結果に応じて適正な配分がなされれば、納得感もあるし満足度も増します。

 また再評価等移行の際、既得権はある程度考慮する必要はあります。制度設計は慎重に行い十分なコミュニケーションが求められます。

 会社としては優秀な人材に継続して活躍して欲しいと願っています。そのための人材マネジメントの一番目の項目が適正な給与の支給、つまり適正な人件費配分と考えます。

 人件費配分のミスリードによって妥当性のない給与で離職されるのは本意ではないし、避けなければなりません。採用費や育成費等コスト的にもマイナスになります。

 人事は今一度現状の総額人件費の在り方を確認し、その配分方法をチェックする必要があると思います。中長期的な視点で戦略的に取り組む必要があります。

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