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2021.10.05

人事制度とは~その大枠から考える~

1.人事制度の役割

 企業における人事制度の果たす役割は何でしょうか。

表現の仕方は様々だと思いますが、大方次のような言い方になると考えています。

「人材という経営資源を最大限に活かす仕組み」

もう少しかみ砕いて言いますと、次の3つのことを決めることかと思います。

  ■ 求める人材要件あるいは職務要件の定義(等級制度)

  ■ 処遇を決めるための評価方法(評価制度)

  ■ 能力、知識、成果等に応じた処遇(給与制度)

 仕組みとしては、社員を格付し、評価をし、給与を決定するというプロセスを廻していくといったルールであり、組織内の秩序を安定させるものと言えます。そして人事制度は、企業理念等の価値観に沿いながら設計し、それを効果的に運用していくこととなります。

 

2.人事制度の必要性について

 就業規則は常時10人以上の労働者を雇用している場合には作成して労働基準監督署に届け出なければなりません。人事制度も同様に10人以上の労働者がいる企業においては、ルールとして明文化して誰もがすぐにわかるようにしておく必要があると思います。

 中小企業は人事制度そのものがないところが多くあります。それはそれで組織運営ができているので良いとの考え方があります。確かにそうであるとも思います。

 ただ少なくとも今は同一労働同一賃金の施行がなされ、おしなべてすべての企業が対象となりました。無期正社員と非正規社員との相違を説明できる状態にはしておく必要はあります。

 

3.人事制度の設計ポイント

 さて会社には就業規則をはじめとして、さまざまなルール(規程)や仕組みが存在します。

人事制度もその一つになるわけですが、会社運営における社内の他のルールと違うところは、運用過程で「人が人を評価する」というわりとセンシティブな行為が内在することだと思います。

 評価結果はその人のポジションや処遇そしてその後のキャリアに反映されます。そのため、自分は会社から何を求められているのか、どうなればどのくらいの給与がもらえるのか、キャリアがどうなっていくのか等がシンプルにわかりやすい内容である必要があります。社内の関心度も高く、共通認識が容易になるよう、構成にも工夫が必要です。

 そして人事制度つまりルールそのものには、納得感があって全社的に受け入れられるものではなくてはなりません。特に策定プロセスにおいて他のルール等とは異なり、より全社的なコンセンサスが得られるように、例えばキーとなる社員によるプロジェクトチーム等の組織横断的な枠組みで作りこむことがよくなされるのは、制度への信頼性を担保することができるからです。

 評価制度において考えます。

 評価指標としては能力や行動そして情意や意欲等が使われます。この定性評価は定量的には図ることが難しく、その評価結果はいまひとつ客観性がなく、その結果年功的な評価にどうしても落ち着くと言われています。

 一方で数値メインの評価では、成果が明確で公平性があるとの見方もあります。ただ営業等は売上高とか利益率とかでわかりやすいですが、ベースのところのスタートライン、例えば営業テリトリーのポテンシャルはなかなか公平性がコントロールできないので別の評価軸も加える等、ある程度配慮する必要はあります。

 またあまり数値が前面にでると、不正などの温床になることも意識しておき、必ずしも数値だけでなくプロセスや顧客の声なども複合的に取り入れることも必要ではないかと思います。つまり上司からの一方向や数値だけの一項目だけでなく、多方向からの視線を評価に取り入れることだと思います。

 さらに評価は人間が行うものなので好き嫌いもあれば相性的なものもあります。つまり恣意的なものが潜在しているのは仕方がないと割り切るしかないとも言えます。ただなるべく公平にかつ一貫性のあるものにするには、繰り返しですが、上司一人が評価するのではなく、多くの目で評価をするプロセスを組み込むことが良いと思います。例えば階層ごとの評価の会議体を設ける、360度評価をするなどは一つの対策となります。

 さらに人事制度を直接的で経営者的なものの言い方をしますと、「限られた総額人件費を、適正な手段で最も有効に社員に配分する仕組み」とも言えます。

 つまり人件費(≒給与)は人材という経営資源に投資することでありますから、当然ながら費用対効果を求めることにもなります。折角高く評価しても、「給与が低い」とか「ボーナスが少ない」と不満を感じることがおきてしまうことは、配分方法にも一定の問題があるわけです。

逆にローパフォーマーなのに余計に給与を支給しても誤ったメッセージになるだけです。

 また、ハイパフォーマー、ミドルパフォーマーそしてローパフォーマーとの評価の公平性とともに配分のバランスも大切です。どの程度の差が必要か、およそ納得感のあるものにしなければなりません。

 もちろん総額人件費が少ないため、残念ながら絶対的に配分が少ないということもあります。ただその組織内で重要なポイントは、内部での配分差がそれなりに存在しその幅に納得感のあるものでなければいけません。

 

4.これからの人事制度とは

 例えば人事制度の根幹となるのは等級制度となります。いわば社員の格付けをするものとなります。その種類は主に以下の3つが使われています。

 

名称

主たる評価軸

特徴

職能資格制度

能力

人ベース

役割等級制度

役割

責任ベース

職務等級制度

職務

職務ベース

 昨今、職務等級制度(≒ジョブ型)への移行が広く言われています。ここでは詳細は述べませんが、つまり新卒一括採用、年功序列、終身雇用といった日本の人事慣行を終焉させ決別するための制度が、ジョブ型であるという認識です。

 人材の専門化、流動化そして報酬の市場価値化が進めば、より一層イノベーションを起こし更なる成長を目指す人材を創出するための大きな仕組みになりえると私も理解しています。

以上

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